SAWAMURA PRESS

人・まち・企業の未来をひらく、あらゆる活動を発信します。
HOME > SAWAMURAプレス > 【きっかけStories】アートが日常のオフィス空間に新しい価値を生み出す。壁画から生まれる新しいコミュニケーション
きっかけStories
オフィスデザイン
2026.10.08
【きっかけStories】アートが日常のオフィス空間に新しい価値を生み出す。壁画から生まれる新しいコミュニケーション

SAWAMURA のブランドミッション「きっかけを創造する」をもとに、私たちが共感する企業や人に、地域に新たな「きっかけ」を生み出す活動・ビジョンについてお話を伺うコラム「きっかけStories」。
今回ご紹介するのは、画家の日比谷泰一郎さん。今年、SAWAMURA 本社のミーティングルームに壁面アートを制作していただきました。

私たちは、建物や空間をつくることは、単に「場」を創ることだけではなく、そこで過ごす人の気持ちや、人と人との関わり、新しい体験を生み出すきっかけを創出していきたいと思っています。
アートが加わることで、空間にはどのような新しい価値が生まれるのでしょうか。

今回のアートプロジェクトでは、日比谷さんにSAWAMURAの建築現場を訪ねていただき、働く人や仕事、その場の空気に触れていただいた体験から作品を構想していただきました。

記事では完成したアートを観ながら、日比谷さんとともに作品づくりを振り返っていただくことに。制作秘話もたっぷりご紹介しているので、ぜひお楽しみください。

 

PROFILE
日比谷泰一郎(ひびやたいいちろう)さん

「人」をテーマに、街を行き交う人々の何気ない日常をスケッチし、その線を元に作品化。空間を最大限に活かした大きな作品を多数制作している。個展、グループ展多数。

▪️経歴
1987年 埼玉県生まれ
2010年 武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業
2012年 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻日本画コース修了

▪️主な受賞歴
神戸ビエンナーレ2015ペインティングアート展入賞
アクリルガッシュビエンナーレ2018佳作
TENNOZ ART FESTIVAL 2022公募壁画アーティスト選出
SHIBUYA ART AWARD 2022入選
UP&COMING ARTIST AWARD 2022優秀賞など

 

壁面アートの依頼は、都心の会社が中心。
SAWAMURAからの依頼は意外でした。

ー今日は東京からお越しということですが、関西はよく来られますか?

グループ展やアートフェアで来ることが、ここ3年くらいで増えました。大阪・京都は近年、観光客が増えていることからアートシーンとしても盛り上がっている印象があります。

ー滋賀県へはこれまで来たことはありましたか。

いえ、なかったですね(笑)。去年、SAWAMURAの取材ではじめて滋賀に来ました。

ーSAWAMURAからの依頼を受けた時の印象を教えてください。

これまで壁面アートを制作してきたのは都心の会社がほとんどで、SAWAMURAから依頼を受けた時はちょっと意外でした。どんな場所に会社があるのかも想像できなくて。本社の場所を調べると「琵琶湖のすぐ横なんだ」と驚きました。

ー実際に取材で訪れた時の、高島の景色はどうでしたか?

空が広い。駅から出た時に、空間が開けている感じがしました。私の住んでいるところはビル群なので、この感じ久しぶりだなと思いました。

現場の人たちが今、創り上げている様子を描き、
未来へ向かうイメージを出したかった。

ー取材時の印象を教えてください。

複数の建築現場を取材して、新築、リフォーム、企業のオフィスや工場など、幅広い業務内容だと改めて感じました。現場は常に工期もあって、普通はピリピリしていると思うんです。それでも現場のみなさんが気さくに対応していただき、人当たりの良さを感じました。

ー今回の作品について、改めてコンセプトを教えてください。

木造・非木造の現場で働いている方々のお話を聞き、写真も撮らせてもらいました。そこからスケッチを描き起こし、さらに自分のイメージを加えていくつか作り、それらを組み合わせて1枚の作品に仕上げています。構成としては建造物の印象から着想して、直線的なリズムをベースにしました。その中には現場で働く人だけではなく、建築中の構造物も描いています。作品全体で現場の人たちが今まさに創り上げている姿を描いて、会社として未来を築いていることを表現しました。

ー作品にはどんな画材を使っていますか?

メインの画材はアクリル絵の具です。ただアクリルだけだとどうしてもマットな印象になるので、質感の欲しいところには日本画に使う伝統的な岩絵具を使っています。

人物や建物の輪郭を表す線を銀色で描いていますが、この線、実は筆を使っていません。筆だときれいな線になりすぎるので、ホットドックにケチャップを絞る容器に絵具を入れて絞り出しながら描いています。あえて不自由な道具を使うことで、人の衝動的な動きやフォルムを再現でき、乾いた時にはぷっくりとした立体的な質感の線になるんです。今回は原画を壁紙にプリントして仕上げていますが、その質感が良く再現できていると思います。

6案出したカラーバリエーションで、
採用されたのは最も攻めた色でした。

ー作品を飾る空間を見た時の印象を聞かせてください。

吹抜けのおしゃれなオフィスだと思いました。作品が入る場所は、2階に上がって正面に見えるミーティングルームの壁一面。空間全体はナチュラルベースだったので、まずどっちがいいんだろうという迷いがありました。

ー迷いというと?

作品の雰囲気を、空間に合わせた方がいいのか、ちょっと攻めた感じがいいのか。やっぱりこの壁面の大きさだと会社のイメージにも大きく影響するので、特に色合いについてはどうしようかと思いました。

ー採用されたのは、どんなカラーバリエーションだったのですか。

一番攻めた色合いになりました(笑)。全部で6案提案したのですが、もうちょっと落ち着いた雰囲気が選ばれるかなと正直思っていました。実際、自分自身の作品でも、ここまで鮮やかな作品はいまだかつてありません。もちろん作品によってはビビッドな部分もありますが、全体的にここまで強い色合いははじめての試みでした。この一番インパクトのあるカラーリングに決めたと聞いた時、SAWAMURAさんらしい攻めのスタンスを感じましたね。

ー空間全体の仕上がりはいかがですか。

合っていると思います。ガラス張りの空間なので、社員のみなさんが会議をしている様子が外からもはっきり見えますよね。人と作品がマッチする感じがいいなと思いました。当初、ガラスの壁が作品をまたがってしまうところが気になっていたんです。でも仕上がりを見ると、作品は分断しているけど、つながっても見える。壁面アートがガラスにもうっすら反射したり、室内の人がアートと重なったり、アートが横断的に見える空間として、とてもおもしろいと思いました。

壁紙の継ぎ目が目立たない仕上がりに、とても満足しています。

ー今回は原画を壁紙にプリントして施工していますね。

そうですね。今まではオフィスに伺って壁面に直接描いていますが、今回はじめてプリントでの壁面アートになりました。壁面の5分の1サイズで原画を制作したのですが、作業も自分のアトリエで。普段の壁画制作よりも、自分の作品づくりに近い感覚でした。

ー完成した作品を今日はじめてご覧いただいた感想は。

プリントでも全然いい!というのがよくわかりました。この大きさだと1枚の壁紙では出力できないので、壁紙と壁紙の繋ぎ目の仕上がりを心配していました。たぶん8枚くらいの壁紙を繋ぎ合わせていますが、仕上がりに大満足です。ちょっと離れたら、ほとんど繋ぎ目がわからなくなります。

他にも原画と壁紙の色のニュアンスを合わせたかったので、2回、色校正しています。プリントする壁紙の種類も、ツヤがあったりボコボコとした表情があったり、何パターンかあって、いろいろ見て選びました。その仕上がりを今日はじめて見て、いい感じだと思いました。もしかしたら、プリントって気づかない方もいるんじゃないかな。

ー社員さんの中には、直接壁に描いていると思った方もいるそうですよ。日比谷さんの周りからの反応はありましたか?

私の個展に先日、SAWAMURAさんとのお仕事のプロジェクトボードと一緒に原画を出させてもらいました。その時のお客さんの反応がすごく良くて。普段、絵だけの展示だとコメントしづらいみたいで、いつも「すごいですね」で終わってしまうんです。でもこうやって企業との作品づくりをご紹介すると、そこを切り口に会話が広がっていってすごく楽しかったです。

 

アートを通じて「人」と直接的に関わっていくことを
今後はもっとやっていきたい。

ーそもそも日比谷さんの作品が、「人」をテーマにしているのはなぜですか。

学生の時は日本画を学んできました。かなりアカデミックな中にいたので、それこそ鳥獣戯画を模写したり、花や風景を描いたり一通りやることはやってきました。その中で自身の作風を模索した時に、自分は人とのコミュニケーションが好きで、やっぱり人が好きなんだと気づいて。最初の頃は今の作風とは違って、人物を描く時も日本画のオーソドックスな手順で作品をつくっていました。

そうやって描いた作品は、人物画としては成立しているんです。ただ生きている感じがしませんでした。そこから駅とか人が多いところで群衆をスケッチするようになり、スケッチした線とかフォルムをそのまま作品に活かすかたちで作品制作をはじめ、現在の作風に至っています。デッサンをしている線より、街で通りすがりの人を描いた線の方が、生き生きしていると感じて…。そこからもう何年くらいかな。ずっとこのスタイルでやってきています。

ー自身の作品づくりと、企業との作品づくりの違いをどこに感じますか?

壁面アートでいいなと思うところは、まずこの大きさ。普通にこのサイズの作品を描いても、まず納品先がなかなか決まらないですからね(笑)。個展やグループ展に1週間出しても、売れずに自宅の倉庫に戻ってくることはよくあります。

もう一ついいところは、常設されること。基本的にオフィスという人のいる空間に、常に展示されることにアーティストとしての喜びを感じます。私の作品は群衆をテーマにしているので、作品が入った空間で絶えず人が動く。作品だけというより、空間でアートが成立する感じが私自身の作風とも合っているように感じます。

ー最後に、今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

先日、壁画アートを現地で描いて、部分的なところを社員さんたちにつくってもらうワークショップを実施しました。自分自身の作品づくりと並行して、ワークショップのようにもっと人と直接的に関わっていく機会を増やしていきたいですね。

例えば、壁画を描いた会社さんに改めて呼んでいただき、社内での交流やワークショップの講師として部署の垣根を超えた交流をサポートする。自分自身のスキルを活かして、そういったコミュニケーションを創出したり、人と人とのつながりを広げていくこともできると思います。壁面アートのようなモニュメントとしての制作ももちろんいいのですが「画家の日比谷さんです」と言われると、少し距離を感じてしまうことがあります。アートへの苦手意識もあると思うんですけど、アートは特別なものではなくて誰もができる楽しいこと。だから、みなさんが思っているアートへのハードルを少しでも下げていくコンテンツを提供していけたらなと思います。

ー今後のご活躍を期待しています。今日はありがとうございました!

この記事を書いた人

福馬俊太郎
滋賀県高島市在住。フリーの編集・ライターとして活動中。SAWAMURA社内報の取材・執筆にも携わる。

 

Interview&Text:福馬俊太郎/Edit:SAWAMURA PRESS編集部

PICK UP