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地域・まちづくり
イベントレポート
2026.09.02
一枚の絵巻が紐解いた地域のDNAと、共に描く「ひらく未来」 【 未来を描く歴史絵巻 – 大溝 -お披露目会レポート】

「昔、このあたりにはね——。」
一枚の鮮やかな絵巻を囲みながら、そんな言葉が自然と飛び交いました。
2026年7月16日、株式会社澤村 本社にて、「大溝歴史絵巻」のお披露目会を開催しました。
この絵巻は、大溝に暮らす人々へのヒアリングを通して集めた、地域の歴史や記憶、日々の暮らしにまつわる言葉を、一枚の絵巻として可視化したものです。

お披露目会では、絵巻を囲みながら「そうそう」「それ、知ってる」と、地域の皆さんがそれぞれの記憶を語り合う場面も。そこから見えてきたのは、大溝がこれまで大切にしてきたもの、そして、これからのまちの未来につながる「大溝らしさ」でした。
本記事では、当日の様子を振り返りながら、「大溝歴史絵巻」がどのように生まれ、そこからどんな地域の価値や未来が見えてきたのかを紹介します。

SAWAMURAの創業の地、大溝

今回の舞台となった大溝は、滋賀県高島市勝野、琵琶湖の西岸に位置する地域です。
かつて大溝城の城下町として栄え、今も水路や古い町並みなど、400年以上の歴史を感じられる景観が残っています。
そして、株式会社澤村の本社があり、創業の地でもあるのが、この大溝です。

住宅や建築を通じて地域の風景や暮らしに関わってきた私たちにとって、大溝の価値を考えることは、建物だけではなく、そこに暮らす人の記憶や文化、人と人との関係性を未来につないでいくことでもあります。

一方で、地域では人口減少や空き家の増加など、まちを取り巻く環境も少しずつ変化しています。だからこそ今、これまで大溝に受け継がれてきた歴史や文化、人々の記憶を改めて見つめ直し、これからのまちのあり方を考えていくことには、大きな意味があります。
「大溝歴史絵巻」は、そんな問いから生まれた一枚です。
過去を記録として残すだけではなく、地域に眠る価値をみんなで見つけ直し、それを未来へどうつないでいくのか。
そのきっかけとして、地域の皆さんの記憶や言葉が、一枚の絵巻に描かれました。

まちの歴史と記憶を語り合う「 未来を描く歴史絵巻 – 大溝 -」お披露目会

今回お披露目された「大溝歴史絵巻」は、トヨタコニック株式会社の「DAS LAB」が進めるプロジェクト「DAS Chronicle」の一環として制作されたものです。

DAS LABとは:
データ・アート・サイエンスの力を掛け合わせながら、地域や社会に眠る価値を見つめ直し、未来の可能性を描く活動に取り組んでいます。
プロジェクトの目的:その土地に残る記憶や文化、人々の声を丁寧に拾い上げ、過去から未来への物語として可視化することで、地域が自らの未来を考えるきっかけをつくることを目指しています。

この大溝歴史絵巻も、単に歴史を「記録」として残すためのものではありません。地域に暮らす人の記憶や価値観に耳を傾け、その土地らしい未来を地域の皆さんとともに考えていくための“きっかけ”として制作されました。

会場には、事前の住民ヒアリングにご協力いただいた地域の皆さんをはじめ、プロジェクトメンバーが集結しました。自分たちが暮らす大溝の歴史や思い出、そして未来について語り合う豊かな時間となり、会場は「そうそう」「それ、わかる」という共感の笑顔であふれていました。誰かが語る思い出に別の誰かが言葉を重ね、自分自身の歴史を話すようにまちの魅力を楽しそうに語る姿がとても印象的でした。

地域の未来は、地域のDNAから生まれる

このプロジェクトを進めたDAS LABの田中さんは、取り組みの背景をこう語ります。

「地域の未来を考えるとき、他地域で成功している事例をそのまま持ち込むだけでは、その土地らしさは生まれません。大切なのは、その地域がこれまでどんな歴史を歩み、どんな価値観を育んできたのかを紐解くこと。」

未来は、過去の延長線上にある——。

その考えのもと、住民のみなさんへの丁寧なヒアリングを重ね、語られた歴史や記憶を「グラフィックレコーディング」と呼ばれる、言葉や出来事をイラストや図で可視化する手法を用いて、一枚の絵巻へとまとめ上げました。
また、この絵巻づくりにはもう一つ、大切な視点があります。
家づくりや農業など、住民にとっての日常の「当たり前」は、外からの視点で見れば、その土地ならではの素晴らしい価値です。

その価値を、外から来た人だけではなく、地域に暮らす人自身にも改めて見つめてもらう。絵巻は、大溝の魅力を外に伝えるだけでなく、住民自身が自分たちのまちを見つめ直すための入口でもあります。

「合衆国やから」——絵巻から見えてきた、大溝らしさ

今回の絵巻づくりにあたり、DAS LABが大溝の住民の方々に話を聞く中で、印象的な言葉がありました。

「大溝は、合衆国やから。」商人や職人、異なる宗派の人々が行き交い、ともに暮らしてきた大溝。その歴史からは、外から訪れる人を受け入れ新しいものを取り入れながら「自分たちらしさ」をつくってきた姿が見えてきます。

4年にわたり滋賀を調査してきたDAS LABの井戸さんは、その特徴を「リベラルで、開かれた文化」と表現します。しかし、今回の取り組みで見えてきたのは、単に「開かれている」ことだけではありませんでした。
お披露目会では、絵巻を囲みながらこんな言葉が交わされました。

「移住者だった主人も『地域のお祭りがあるから仲間に入れてもらえた』と言っていました。子どもが生まれたときも、地域全体に育ててもらった感覚です」(大溝育ちの参加者)

「土地とのつながりをずっと求めていました。今、大溝にいますが、すごく居心地が良いんです」(移住者の参加者)

立場や関わり方が違っても共通して伝わってくるのは、過度な干渉をせず「目の端で見守ってくれている」ような温かなつながりです。「合衆国」という歴史と、今を生きる人たちが感じる「なんか、いい」この場所ならではの居心地の良さ。大溝らしさは、日常に根ざした絶妙な人との距離感の中に息づいています。

大切なものを残すために、変えていく

一方で、「残していく」ということは、昔の形を頑なに守り続けることだけではありません。大溝では、かつて女人禁制だったお祭りも「残していくために、入ってもらおう」と時代に合わせてルールを変えてきたといいます。大切なものを守るために、変える。その柔軟さもまた、大溝らしさを形づくってきた大切な価値なのかもしれません。

絵巻を通して、住民自身が日常にある「当たり前」の価値に気づき、地域の内と外で言葉を交わしながら見つめ直す。そんな豊かな時間が、これから少しずつ広がっていくはずです。人を受け入れ、時代に合わせて変化しながらも、自分たちらしさを残す。そんな大溝の姿から、DAS LABが描いたテーマが「ひらく未来」です。世界中から多様な人が訪れ、新しい価値観と出会いながら、大溝らしさが受け継がれていく未来を描いています。今回の絵巻は、完成された答えではありません。「大溝ってどんな場所だろう?」「こんな未来を描くと面白いんじゃないか?」と、地域のみなさんと一緒に考えるための大切な問いかけです。

「暮らしたい」と思う人が、少しずつ集まるまちへ

一枚の絵巻から見えてきたのは、大溝の歴史だけではありません。そこには、このまちがこれからどんな風景を描いていけるのか、そのヒントもありました。
この地域で暮らし、仕事をするSAWAMURAにとって、地域の未来を考えることは、自分たちの未来を考えることでもあります。

「この地域は観光地ではなく『城下町』です。一過性の観光客を呼ぶのではなく、歴史や文化に惹かれて『住みたい』と思う人が少しずつ集まり、日常の風景に温かな賑わいや人の気配が戻ってくること。地域の歴史やコミュニティに共感する人たちとともに、日常をじっくり作っていくことこそが、本当の豊かさだと考えています」(代表取締役社長 澤村幸一郎)

観光地として人を呼び込むのではなく、「ここで暮らしたい」と思う人が少しずつ増えていく。そのためには、まず、このまちにすでにあるものに目を向けること。そして、地域の人たちが自分たちのまちを語り、外から来る人ともその魅力を分かち合うこと。
今回の絵巻も、そのきっかけのひとつです。
過去をたどり、地域に息づく価値を見つめ直す。そして、それを未来の暮らしにどう生かしていくかを考える。
建物をつくるだけでなく、その先にある暮らしや地域の風景を見つめ、未来へつないでいく。創業の地・大溝で、SAWAMURAがこの取り組みに関わる理由も、そこにあります。

大溝から世界へ

今回お披露目された「未来を描く歴史絵巻 – 大溝 -」は、地域だけで完結するものではありません。9月には、オーストリア・リンツで開催される世界的なメディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ・フェスティバル2026」 で展示される予定です。

現地には、当社コーポレート統括部の河本次長も参加し、このプロジェクトと大溝の魅力を世界へ発信します。世界の人々は、この絵巻から何を感じるのか。そして、大溝というまちの価値は、どのように受け止められるのか。
その様子は、後編として改めてレポートします。大溝から始まった物語は、いよいよ世界へ。その続きも、ぜひ楽しみにしていてください。

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