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地域・まちづくり
イベントレポート
2024.02.27
【きっかけStories】地域の方が大溝に住んでいることを誇りに思えるように-大溝まちづくりマルシェ実行委員

SAWAMURAのブランドミッション「きっかけを創造する」をもとに、私たちが共感する企業や人、地域に新たな「きっかけ」を生み出す活動・ビジョンについてお話を伺うコラムきっかけStories。

第3回は、旧大溝地区(高島市勝野)で10月に開催された大溝まちづくりマルシェをご紹介します。高島市の南の玄関口にあたる旧大溝地区。古くから湖上輸送の要衝として栄え、戦国時代の水城跡である大溝城跡や城下町の佇まいが今も残る風光明媚な地域です。
その美しい景観は平成27年に「大溝の水辺景観」として国の重要文化的景観に選定されました。

今年は40店舗が出展。子供から大人まで多くの来場者で賑わった

この大溝地区をフィールドに、風情ある町並みを散策しながら地域住民との触れ合いを楽しめる大溝まちづくりマルシェ。昨年に続き第2回となる今回は、周辺のお寺でも特別企画が行われ約1500人が来場しました。

地域住民が主体的に考えたという趣味や特技を活かした日常の延長にある出店の数々。アットホームな雰囲気に包まれたイベントを、この地域に住む方たちが一番楽しんでいるように感じました。今回は全体の運営と進行を担った大溝まちづくり実行委員の5名に、マルシェの企画や、まちづくりへの想いについてお話を伺います。

大溝まちづくりマルシェ実行委員

奥村健太さん(写真右端)
高島市役所職員で、大溝生まれ大溝育ち。地域の方との連絡対応や出展者との調整を担う

上田未來さん(写真右から2人目)
マルシェ発起人の一人。シェアキッチン「白湖」の店主として、地域で暮らす方々のコミュニティづくりのハブ的な存在

上田亜友美さん(写真中央)
まちづくり協議会の事務局として、地域の課題に向き合いながら、元デザイナーの経験を活かして、広報物の制作や資料作成などを行う

大杉千晶さん(写真左から2人目)
高島学園(小学校)の元教諭。主に学校関連への協力依頼や出展者との調整を担当

和田さん(写真左端)
地域住民と協力してマルシェを立ち上げた地元建設業SAWAMURAの代表として参加。広報・採用に携わる経験を活かし、企画・運営など全体をサポート

自分たちが住むまちの魅力や可能性に気付いてもらう。だから「まちづくりマルシェ」。

—今日はよろしくお願いします。昨年に続き今回も盛況でしたね。

未來さん:地域の方を中心にたくさん来ていただけました。やりたかったことも盛り込めて、自己採点では100点を付けていいかも!

奥村さん:私は大溝で生まれ育ったということもあり、マルシェで改めてこのまちを好きになれた気がします。

—みなさん好感触だったんですね。ではまず、大溝まちづくりマルシェを開催することになった背景から教えてください。

未來さん:えっと…。どういう経緯でしたっけ?(笑)

和田さん:確かコロナ禍でこの地域のお祭りが軒並み中止になっちゃって。こういう時でも地域のみんなが集まりやすい居場所づくりをしたいねというところからはじまりました。それで人が集まりやすいイベントって何かな?と考えた時に「マルシェ」がいいなと。

未來さん:そうでしたね。よくあるマルシェって、お店で何かを買って楽しんで帰るみたいなところが多いじゃないですか。でも私たちはそこが目的じゃなくて。自分たちの住むまちの可能性に気付いてもらい、まちづくりを身近に感じてもらう。そこを一番に考えています。だから「まちづくりマルシェ」。もちろん大溝地域以外の方も、マルシェをきっかけにまちをめぐってほしいという思いもあります。

—あくまでも主役は地域住民なんですね。

大杉さん:どこの地域も同じかもしれませんが、最近はゲームやネットに熱中して家からあまり出ない子どもたちが増えて、地域との関わりが薄くなっている感じがしていて。このマルシェは子どもたちにとっても地域を知って楽しむ良い機会になっています。

—同日にはSAWAMURAマルシェも開催されていましたね。

和田さん: SAWAMURAマルシェは外から人を呼び込んで、自社の価値観やこの地域の魅力に触れてもらいたいという企画。同じ日に開催することで、もっと身近なまちの面白さを外部の人たちにも知ってもらい、地域を一緒に盛り上げたいという想いがあります。

去年の楽しい雰囲気や盛り上がりを見て、出店したいという方が増えた。

—企画・運営をする上で初回から大事にしていること、今回新たに取り組んだことはありますか?

未來さん:初回から大事にしているのは、大溝のまちをいかに回遊してもらうか。まずは地域に来てもらわないとはじまらないので、SAWAMURAマルシェの来場者をこっちのマルシェに誘導するために、会場と会場をつなぐメイン通りの店舗配置は工夫しています。

今回はさらに、境内で企画をやってくださるお寺がたくさんあったんです。昔は子どもたちの放課後の遊び場だったのが、最近は、地域で活用する機会が少なく人が行かない場所になっちゃっていて。住職さんたちにも「もっと地域に開放したい」という思いがあり実現しました。

実委員主体で行われた勝安寺での音楽ライブ

—お寺では音楽ライブや境内を開放してカフェなどもされていましたね。催しの内容はどなたが考えたのですか?

未來さん:実行委員主体で行った音楽ライブ以外は、基本的に各お寺に企画してもらいました。SAWAMURAさんに近い流泉寺(りゅうせんじ)さんではお茶とお菓子を楽しむお寺カフェをされたんですけど、マルシェ後にお話を聞くと500人くらい来たんじゃないかって。ちょっと盛ってるかもしれませんが(笑)

大杉:腹話術もしたいし、音楽会もしたいとか。すごく前向きに取り組んでいましたね。

流泉寺ではお茶と高島名物の丁稚羊羹を提供。他にも腹話術などの催しも住職自ら企画した

—地域全体が会場ということで、来場者の誘導も運営で大切なことだと思います。マップやチラシなど告知物をつくる上でこだわった点はありますか?

亜友美さん:一般的なイベントって、広いメイン会場にお店が集まっているところが多いと思うんですけど、このマルシェは地域全体が会場。だからまずはどこまでが会場なのかをしっかり伝えること。その上で会場ごとにいろんな催しがあるので何をしているのか。それが一目でわかるようなシンプルなデザインにこだわりました。

会場の目印としてロゴを使ったのぼりを配置

—ロゴもデザインされたそうですね。どんな思いを込められたんですか?

亜友美さん:まちづくりがテーマのマルシェなので、地域を象徴する大溝城跡と水の文化をイメージしてデザインしました。はじめてマルシェのことを聞いた時、今までになかった新しいことをするというより、コロナでいろんな活動が下火になっているけど、もう一回みんなでやっていこうという力が再集結するような印象を持ちました。

だからロゴの石垣の部分には小さな丸が集まっているんですけど、これはみんなの想いや力が集結してマルシェを支えているイメージなんです。私としては実行委員の姿勢を表すものが一個できてよかったと思っています。


大溝まちづくりマルシェのロゴ

—前回からイベントに対する地域の方の受け止め方に変化はありましたか?

奥村さん:昨年ははじめてということもあり、こちらから参加してほしいと声を掛けて出展してもらったんですけど、今年は出展者のほとんどが応募によって集まったんです。去年の楽しい雰囲気や盛り上がりを見て、出店したいという方が増えたんだと思います。

和田さん:ご自身でつくった帽子とかを自宅の庭先で販売される方もいましたね。

近所の方も知らなかった特技や趣味を披露する場としても活躍

—私は仮装をしてまちを歩くハロウィンこども行列が印象的でした。子供たちを先導する奥村さんのコスプレ、気合い入っていましたね。

奥村さん:そうなんです! 去年はビギナー感がありましたが、今年は飛躍できたなと(笑)

大杉さん:私たちも当日はじめて知って驚きました(笑)

—あの衣装はご自身で仕込まれて?

奥村さん:もちろん!

和田さん:あれは誰かをイメージして?

奥村さん:特定の誰ってわけではなく、なんとなくラグビー日本代表にいそうな選手を想像して。マルシェ当日の朝4時からラグビーワールドカップの決勝が放送されていたので、しっかり観戦して「俺もやるぞ」と気持ちを高めてパレードに挑みました。

全員:(笑)


自前の衣装で行列を先導する奥村さん

大杉さん:子供たちも元気いっぱい走り回って、先導するアフロの奥村さんを抜かしたり(笑)パレード以外でもボランティアで参加した子供たちみんな楽しんでいましたね。

もっとまちの魅力を知ってもらうために、今後の課題は地域を巻き込んだ実行委員の組織力強化。

—今年のマルシェを振り返り、見つかった課題などがあれば教えてください。

未來さん:昨日ちょうどその話を一部のメンバーとしていて。課題としてはまず実行委員の体制をどうしていくか。今年はこの5人に、地域住民自治協議会(通称 自治協)の2人を加えて運営しました。マルシェとしては来場者にもっと町を回遊してもらえるような仕組みにしたいんですけど、今回のイベント規模をこの人数で運営するにはギリギリだなと。

和田さん:このマルシェは地域の新しいコミュニティづくりも目的だと思うんです。だから自治会とか自治協ともっと密に関わって巻き込んでいきたいですね。


奥村さん:そうですね。今回は大溝地域の7つの自治会の中で3つに協力してもらいましたが、
地域の全自治会に参加や協力をしてもらえる体制になれば、もっといいイベントになると思います。

大杉さん:もし規模を拡大する際も、本当にそれがまちのためになるのかを考えないと。私たちの目指すマルシェは規模を大きくすることよりも、まずはまちを元気にしたい、そしてまちの人たちが楽しめる・活躍できること。そこは見失わないようにしていきたいですね。

地域の中で生活が循環し、まちのエネルギーによってマルシェが支えられる、というのが理想。

—最後にマルシェを通じて、今後大溝がどんなまちになってほしいか。みなさんの想いを聞かせてください。

和田さん:私はこれまで、SAWAMURA本社と駅との往復ばかりで、この地域のことをあまり知らなかったんです。マルシェをきっかけに大溝を歩いて住民の方にお話を聞くと、この地域が好きでこれからも大切に受け継いでいきたいという方がたくさんいました。マルシェがそういう想いをつなげる場になれば、今よりもっと活気あるまちになれると思います。

奥村さん:この地域で生まれ育った私としては、観光客との交流が積極的にある地域になってほしいですね。マルシェ自体は地域の方が主役ですが、気軽に参加してもらってまちの魅力や人柄に触れてもらいたいなと。

亜友美さん:私は大溝の雰囲気がすごく好きで移住してきました。こんなにすばらしいまちに住んでいるということを、マルシェで地域の方に知ってもらい自信につながるといいなと。大溝で暮らすことに誇りに感じれば、もっと長く住みたいとかまち並み保全にも関心を持ってもらえる気がします。

大杉さん:そうですね。高島市内外の方々が大溝の旧城下町をもっともっと歩いてほしいですね。こんなに素敵なところなのにその良さを気づいていない人が多い気がします。亜友美さんが言っていたように、自分たちの住むまちに自信を持っている。そういう地域になってほしいですね。

未來さん:私もここで暮らす者として、普段の生活に満足できる地域であってほしいと思います。このまちには商店街があり、商いをされている方もたくさんいます。ネットで簡単にモノを買える時代。個人商店って難しい時代だとは思います。

でも理想としては、この地域の中で生活が循環してそれが続いてほしい。マルシェも私たちから盛り上げるというより、地域の人のエネルギーによって支えられる存在になるといいですね。

—来年のマルシェも楽しみにしています。ありがとうございました。



 

この記事を書いた人

福馬俊太郎
滋賀県高島市在住。フリーの編集・ライターとして活動中。SAWAMURA社内報の取材・執筆にも携わる。

 

Interview&Text::福馬俊太郎/Edit:SAWAMURA PRESS編集部

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