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きっかけStories
インタビュー
2023.10.23
【きっかけStories】琵琶湖の魚のおもしろさや美しさを知ってほしい-黒川琉伊くん

SAWAMURAのブランドミッション「きっかけを創造する」をもとに、私たちが共感する企業や人に、地域に新たな「きっかけ」を生み出す活動・ビジョンについてお話を伺うコラムきっかけStories。

 

第2回となる今回。ご紹介するのは琵琶湖の魚をこよなく愛する高校生1年生、黒川琉伊(るい)くんです。幼少期から琵琶湖に通い続けてすでに10年以上。特に湖魚の圧倒的な知識と情熱が注目され、「琵琶湖のお魚博士」として地元だけではなく全国でも知られるようになっています。日々、自分なりの研究に没頭する傍ら、イベントでの講師や絵本の出版など琵琶湖の魚魅力を伝える活動にも精力的。そんな琉伊くんの今の活動内容や琵琶湖への思いをたっぷり語っていただきました。

 

黒川琉伊(くろかわるい)くん

2007年滋賀県大津市生まれ。10歳でラムサールびわっこ大使に就任し、第17回世界湖沼会議に出席。2022年には、魚愛を200色の色鉛筆で描き綴った絵本『はじめてのびわこの魚』(能美舎)を出版。今年8月に放送された24時間テレビ「愛は地球を救う」では、番組の企画でオリジナルの水族館「びわこリウム」をプロデュースするなど、多岐にわたって活動中。

 

琵琶湖は何度も行っても、毎回新しい発見があるからおもしろい。

―今や琵琶湖のお魚博士として知られていますが、改めて魚に興味を持ったきっかけを教えてください。

2歳くらいの時だったかな。「スイスイ!フィジー!」という魚のアニメにどハマりして。そこから琵琶湖博物館(滋賀県草津市)に毎日のように通いまくった結果が今です。

 

―そんな小さな頃から好きだったんですね。琵琶湖へはいつ頃から?

3歳くらいから網を持って行ってるんですけど。他の地域では見かけない魚がたくさんいる琵琶湖ってすげーなって。魚だけで固有種は16種類もいるし、周囲の自然環境も含めておもしろい地域だなと思いました。最初の頃は研究というか、ただ単純に自分の好きなことをして気になったことをまとめる。そんな感じでしたね。

 

―では、今はどのように調べているのですか?

まずは調査するフィールドが一番重要で。例えば、同じ魚でも生息地が砂底なのか泥の多い場所なのかによって、魚の模様が微妙に違ってくる。そういう違いを記録しています。だいたい魚を捕ったらまずはフィールドの写真を撮影して、あとは家で飼育したり、食べてみたり、標本にしたり。だから1種類の魚でもできるだけいろんな角度で調べてみたいとは思っています。

琵琶湖の魚でいうと固有種も調べていますが、個人的には固有種じゃないマイナーな魚の方が好きですね。例えばハスという魚は、ご存知ですか? これ僕の推しです。固有種じゃないけど琵琶湖にしかもともといなかった魚で。琵琶湖では30センチから40センチになるけど、他の地域だと10センチから15センチくらいで雲泥の差があるんです。琵琶湖は広いので餌もいっぱい食べられるし、いっぱい泳げるから大きくなるんですけど。そういう発見が網さえあればすぐに行って見つかるって、本当におもしろい。

推しの魚「ハス」について、自身が描いた絵本で解説

―琵琶湖へは毎日のように潜っているそうですね。それは今も変わらず?

琉伊くん 特に夏の間は毎日入らないと体がウズウズしてくるというか。何の目的もないのに入ったりしてます。逆に秋から冬はアユやビワマスの禁漁期間があるので調査が難しいんです。でも今年なんかは夏場にイベントの企画などで忙しかったので、今は学校の勉強に集中しつつ、イベントなどで使えそうなイラストを描いたりしています。

―ずいぶん忙しそうですね。それだけのモチベーションはどこから来るのですか?

琉伊くん モチベーションというか、魚が好き、琵琶湖が好き。それだけです。何度も行った場所でも「こんな魚がいるの?」っていう新しい発見が毎回あると飽きないでしょ。他にも同じ種類で何百匹といる魚の中に、ちょっと違う特徴のものが時々見つかったり。その場その場の魚との出会いっていうか、そういうのが好きなんです。

 

小さな子供たちが、琵琶湖に興味を持ってもらえるように。

―魚の研究をする傍ら、その魅力を伝える活動もいろいろされていますね。

琵琶湖でゴミ拾いをするイベントに参加したり、学者の先生と一緒にイベントの講師として呼んでもらったり、琵琶湖や魚についてお話する機会は結構あります。

 

―それは小さな子供たちに向けてですか?

そうですね。今年も滋賀県のいろんな地域のイベントに呼ばれて参加したんですけど、来てくれた子供たちは最初はポケ~っとしていてあまり魚に興味がなさそうな感じなんです。でも僕が魚の話をしていると、次第に最中になって聞いてくれることが多くて。そういう反応はおもしろいし、こっちの想定外の質問をされることもたまにあります。

 

―ちなみにそれはどんな質問ですか?

「なんで琵琶湖って100mも水深があるの?」とか。答えられます?

 

―……すみません。わかりません。

実は琵琶湖には断層があって、その運動によってちょっとずつ地層が沈んでいるんです。だから沈むスピードが土砂の溜るスピードより早かったから、今の水深になった。みたいな感じで。

 

―すぐに応えられる琉伊くんもすごいですが、鋭い質問をする子供もなかなかですね。そうやって琵琶湖に興味を持つ子供たちが増えていくんですね。

そうなってくれるとうれしいです。

 

 

今年の夏、水族館をプロデュースするという夢が叶った。

―最近では8月に放送された24時間テレビの企画で、オリジナルの水族館「びわこリウム」をプロデュースされましたね。今、振り返ってみていかがでしたか?

山から湖、そして海にかけての生き物のつながりを展示したいという、僕が伝えたいことを水族館という形でしっかり表現できました。魚もいい状態で展示することができたし、ほっとしました。多くの方に協力してもらって、僕の夢が目の前でどんどん実現していく光景は本当に楽しかったですね。

読売テレビ本社のイベントブースに展示された「びわこリウム」

―展示初日は、どんな雰囲気でしたか?

正直、お客さんが本当に来るのか不安でしたが、当日はオープン前からたくさんの人が来てくれて、水族館を見てもらえました。特に驚いたのがオープンして3秒くらいで、水族館の写真がインスタにアップされたんです。開館して、あっウナギかわいい、パシャ、投稿って感じで。

 

―すごい速さですね。子供たちの反応はいかがでしたか?

「この魚どうやって捕ったの?」とか。そういう話で結構もりあがりました。

 

―ちなみに水族館の展示台もオリジナルで、SAWAMURA リフォーム課の大工・西田さんとつくったそうですね。

西田さんがつくったものを一緒に見ながら、台の高さを子供目線に調整したり、木材の年輪を水の流れに見立てるなど細かいところをブラッシュアップしていきました。台の素材についても「ツルツルした綺麗な素材を使ったらどうや」という話も実はあったんです。でも自然な雰囲気を残したかったので、あえて野生み溢れる質感にこだわりました。

 

展示台を細かくチェックする琉伊くん

展示台の設計・製作を担当したリフォーム課の大工・西田さん。素材には滋賀県産材や地元高島市朽木産の端材などを使用しました。


―大工さんの仕事を間近で見てどうでしたか?

頭で考えたことを、すぐに形にできるところがすごい。手際の良さというか。そういうところが職人のすごさなんだと思いましたね。

 

もっと広い視野で琵琶湖という存在を見てみたい。

―これから取り組んでみたいこととかありますか?

とりあえず今は高校生なので学業に注力して、それがひと段落したら一人旅に行きたいですね。ずっと琵琶湖の近くに住んでいますが、近い存在だからこそ見えていないこともたぶんたくさんある。琵琶湖じゃないところから琵琶湖を見てみたいというか。もっと広い視野で琵琶湖という存在を見てみたいですね。

 

―それはすてきな考えですね。琉伊くんが旅から戻ってきた後、どのように琵琶湖が見えるか聞いてみたいです。

もう1つは、以前出版した絵本の内容を更新したいですね。この本に載っている絵は僕が中学2年生の時に描いたんですが、実は載っていない魚も結構あるんです。なので琵琶湖の魚をコンプリートされた本をつくってみたいです。

―琵琶湖の魚をコンプリートするまで、どれくらいかかりそうですか? すぐに読みたい方もたくさんいると思います。

一応、琵琶湖にいる魚はほぼほぼ網羅できているはずなんです。あっ、ちなみにボラが琵琶湖にいたのって知っています? 実はスズキやサヨリといった海水魚が琵琶湖にいたという記録もあるんです。ひょっとしたら昔は海の魚の一部が琵琶湖に来ていた可能性もある。そういったワクワクする情報も含めて、琵琶湖の魅力を知ってもらえる本にしたいですね。

 

―最後に、この記事を読んでいただいている方に、伝えたいことはありますか?

う〜ん、琵琶湖の楽しみ方は人によって違うし、もちろん興味がないのも個人の自由だと思います。でも世界で3番目に古いと言われる湖が、この小さな島国にあること自体が奇跡的なこと。だから普段飲んでいる琵琶湖の水とか、自然について少しでいいので考えてもらえたらうれしいなと思います。

 

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