SAWAMURAでは、暮らしに寄り添うさまざまな体験機会を創出しています。
11月1日(土)には、子どもの運動能力向上を応援するイベント「子どもたちの1day運動教室」を近江八幡市立健康ふれあい公園で開催。イベントに合わせて実現したこの対談では、澤村社長と講師の谷さんに「子どもたちの健やかな成長」をテーマに語り合っていただきました。「暮らし」と「運動」それぞれの専門家によるクロストークをお楽しみください。
目次
幼少期にこそ与えたい、運動する場所と機会
基礎的な運動能力の大切さ
集中力を高める環境づくり
トレーニングと同じくらい重要なリカバリー
競い合い、学び、助け合うことで、より成長する


谷 真一郎さん
サッカー日本代表歴を持つフィジカルコーチとして、複数のJリーグクラブで指導。現在はヴァンフォーレ甲府のフィットネス・ダイレクターを務めながら、自身が開発したオリジナルラダー『タニラダー』を使った講習会を全国各地で開催。子どもたちの能力アップをサポートしている。

澤村:谷さんが開発された『タニラダー』トレーニングの運動教室は、滋賀県で初開催となります。そもそも地域で子どもたちが自由に遊んだり、運動できる場所が足りていないと感じていたのでとても楽しみにしています。小学2年生になる私の息子も一緒に連れてきたかったです。
谷:それは残念です。ゴールデンエイジと呼ばれる運動神経がグッとのびる時期は、9歳から12歳と言われています。動作を理解して体を動かせるのは小学4年生以降ですけど、実は年長や小学1年2年生は動作を見てマネする力がすごいんです。変に悪いクセもついてないので、覚えるのが本当に早いです。
澤村:なるほど。それぐらいの年齢でも、正しい体の動きを覚えられるんですね。
谷:そうなんです。実は一番基本的な「走る・動く」動作は、学校で教えてもらえません。みんな我流です。だからうまくできないと、その段階でネガティブ思考になって嫌いになってしまうんです。でも正しい動き方を知りだんだん足が早くなってくると、トレーニングに前向きに取り組むようになり性格まで前向きに変わってきます。
澤村:性格まで!? それはすごいですね。だから早い段階で、そのきっかけを与えてあげられることが大切なんですね。
谷:そうなんです。私は毎年仙台で指導をしてますが、小学4年生の時にはじめて教室に来た子がいました。出会った当時は、足が遅くて手足の動きもバラバラ。性格も控えめで、どこか自信がなさそうな感じでした。そんな彼女がトレーニングを通して何かを感じてくれたようで。自分からトレーニングをするようになり、毎年会う度に動きが良くなってくるんです。すると性格も変わってきて、自分から積極的に行動できるようになりました。彼女は今、中学2年生になって陸上800m競走で県内トップクラスの実力者に。出会った当時から、体の使い方や性格まで別人になっています。
だから、まさにきっかけなんです。今までうまくできていなかったことには理由があって、一つひとつ改善してよくなる。その変化と過程を体感してほしい。私の教室は走るに特化していますが、この経験は人生においてもいろいろなことに当てはまるよってことも伝えています。

澤村:そういう体験を幼少期にこそ与えてあげたいですよね。ちゃんとしたやり方に早く出会えていれば、そこから学べる時間も長くなる。その先の成長もますます楽しみになりますね。
澤村:社員の中にも「子どもがすぐに転んじゃう」「転んだ時に手が先に出ない」という声を聞きます。これって基礎的な運動能力とどのような関係があるんですか?
谷:それは手足を動かす際に、体の神経とつながっている回路が少ないので、できないことが多いんです。特にコロナ禍で外出できなかったことが大きく影響したと思います。あの時期は子どもたちの運動経験がとにかく少ない。だからか正しく体を動かせない。例えば歩く時に手足が揃って動く子がたくさんいます。
澤村:まずは基礎ができていないと、親としても自由に遊ばせてあげられないですよね。ジャングルジムでも、ちょっと危ないからやめとこうとなっちゃいます。でも実際は「それぐらい大丈夫やから行かせて大丈夫だよ」と言える親でありたいです。
会社としても今、子どもの遊ぶ機会や施設の創出に動き出しています。国産木材を使った遊具や空間をつくって地域コミュニティの拠点を目指しているのですが、そういう場所で子どもを遊ばせる時に大切なのが基礎的な運動能力。手足を思うように動かせないと事故につながってしまいますしね。まずは基礎的な運動能力があって、冒険的な遊び方をするというステップが大事なんだと思いました。
谷:子どもたちへの場所の提供はすごく大事だと思います。まずは基礎的な運動能力を身につけて、そして危険回避能力も覚えていけば、親も「好きに遊んできなさい!」と言える。少々転んでも気にならないくらいの体になってくるんじゃないかな。

澤村:今回の教室も、やっぱり現役のプロサッカー選手にすごい技を教えてもらう方が、華やかで喜んでもらえるかもしれません。でもまずは基礎の大切さを、みなさんに体感してもらいたいですね。
谷:教室では常に音楽を流しています。実は音の力もすごくて。私はシニア向けのプログラムもしていますが、アップテンポの洋楽でやってみたところリズムやテンポに合わせて動くので、みなさん気持ちいいとおっしゃってくださるんです。きっと気持ちが若返るんでしょうね。

澤村:音楽でちゃんと気持ちを乗せることも大事なんですね。私たちも快適なオフィス環境づくりをしていく中で音楽の力には注目しています。集中したいとか、活発な会話をしたいとか、目的に合わせた音楽の選定は有効だと言われています。ちなみに子どもを持つ親として聞きたいことがあって、運動と勉強の集中力アップは関係ありますか?
谷:あると思います。ずっと勉強だけしているのは実は効率が悪い。集中力はだいたい90分から120分で切れます。だから勉強を90分したら、ちょっと体を動かしてまた勉強をする。その方が全然効率いいですね。
澤村:定期的に気分転換やリラックスをすることが大切なんですね。家づくりにおいても、リラックス効果や睡眠の質を高めるために、たとえば子ども部屋を目にやさしい間接照明にする、といった工夫があります。私たちは空間づくりだけでなく、人の心身がよりよく整う「ゆたかな働き方・暮らし方」そのものに向き合う企業です。だからこそ、体の仕組みや原理に基づいた設計の大切さを社会にきちんと伝えていくことも、重要な使命だと考えています。
澤村:運動のパフォーマンス向上のために、普段の暮らし方で指導することはありますか?
谷:練習をすればするほど当然、体は疲労していきますよね。この疲労した状態から回復の時間をしっかり持つことによって、前の自分をちょっと超える。体にはそういう原理があります。だからトレーニングと同じくらいリカバリーが大事なんです。その方法の一つが入浴。シャワーだけの時と、お湯に使った時の血流量は全然違います。さらに発泡タイプの入浴剤を入れてお湯を炭酸にすると、より血管が広がり血流がよくなります。
澤村:そうですか。お風呂が快適だと、そこでゆっくりリカバリーできますね。やっぱり体がぽかぽかした状態でベッドに入る方がいいんですか?
谷:眠気というのは体温が一度高くなって、ふっと落ち着いた時に来ます。
澤村:そうなんですね。住まいの話でいうと、家の中の寒暖差をできるだけ小さく保つことで、快適な室温を維持できヒートショックの予防にもつながります。また間接照明などで寝室環境を整えると、睡眠の質が上がりしっかりとしたリカバリーを促すことができます。それは運動能力を上げるためにも大切なことなんですね。
谷:リカバリーは非常に重要で、プロのスポーツ選手の世界でも「休息・運動・栄養」のサイクルを意識的に計画・実行する戦略的リカバリーが主流になってきています。パフォーマンス向上のために、ただ練習をがんばればいいという時代ではありません。

澤村:ドジャースで活躍する大谷選手も、リカバリーのルーティーンをストイックに守っているから、あれだけのパフォーマンスにつながっているんでしょうね。
谷:彼はよく寝るそうです。さっきおっしゃられたように、住まいの照明とか断熱とか体を休める環境も技術が進みよりよくなってきているんですね。いいなー。そういう家に住んでみたいなー。
谷・澤村:はははは(笑)
澤村:最近の子どもたちは、昔と比べて競争心が少ないように感じます。競争心について、谷さんはどのように感じていますか?
谷:運動会を見ても、今は順位を決めないところだってあります。だから自分が早いのか遅いのかもわからない。その子のできる範囲を大切にしているので、やっている方もどこがゴールかわからない。そこには何の学びもないように感じます。順位を決めることで、早い子に勝つ喜びも学べるし、負けた子は次こそ勝てるようにまた学ぼうとする。その思考回路って、生きていく中でいろいろな状況で役立つと思います。競い合いが当たり前にあり、同時に助け合える。それがスタンダードにあるべきだと思います。

澤村:何よりも「己に勝つ」というか、さっきの自分より早く走れるようになった。その喜びを得ることってすごく大事ですよね。自分自身に勝てず、この程度でいいかと妥協してしまい諦めたり悟ったりすることは怖いなと思います。やっぱり基礎的な走り方を覚えた子どもたちって、もっとがんばろうと思うものですか?
谷:なりますね。あと頭で動きを理解できていなかったから、早く走れていなかったと気づきます。
澤村:しっかり頭の中で、整理する訓練でもあるんですね。すばらしいですね。私たちの会社では「きっかけを想像する」ことをミッションを掲げています。今日の教室をきっかけに、子どもたちが自分自身と向き合い、何か一つでも学んで帰ってくれるとうれしいです。
谷:「きっかけを創造する」、いい言葉ですね。私の取り組みとつながるところがたくさんありますね。
澤村:きっかけが大事で、全部に手を添える必要はない。機会を与えた後は、できるだけ自走させてあげたいですね。
谷:今日1日の教室で、いきなり陸上選手のような動きになるわけではありません。昨日よりもちょっと腕の振りが大きくなったとか。そういう小さな変化に気づくと、教室が終わった後に楽しくなって走ったりしています。
澤村:なるほど。こういう運動の基礎を学ぶ機会を地域に提供できたということだけでも、私たちは嬉しいです。これからも、ゆたかな暮らしのきっかけを与えられたらなと思います。今日はどうもありがとうございました。

この記事を書いた人
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福馬俊太郎 |