
最終更新日:2023年09月25日
病院の建築といえば、清潔感を重視したデザインや、無機質な印象を感じる雰囲気の建物であることが一般的です。しかし、世界にはまるで美術館のような、美しい病院建築を実現した医院も存在します。そのうちの一つが、「サンパウ病院」です。
今回は、サンパウ病院の魅力や特徴などについて詳しく解説します。これから、クリニックの開業をしたいと検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
モデルニスモ建築の「サンパウ病院」
サンパウ病院は、モデルニスモ建築に該当する病院です。
モデルニスモ建築とは、20世紀初頭から中盤にかけて発展した建築のスタイルの一つです。伝統的な建築スタイルからの脱却を図り、新しい建築の原則と価値観を追求しました。
しかし、見た目の美しさだけにこだわっているわけではなく、機能性にも着目したデザインが特徴。サンパウ病院は、まさにモデルニスモ建築の特徴を持つ病院建築を実現しています。
スペインののカタルーニャ州バルセロナにある歴史的な病院であるサンパウ病院は、まるで美術館のような美しい建築美を実現していながら、自然の光を最大限に取り込めるような採光の広さにこだわるなど、機能性に注目されている点が特徴です。
また、病院の建物は、美しい庭園や通路と繋がっている点も特徴。患者さんと病院スタッフのコミュニケーション活性化や、快適な空間実現に役立てられています。
サンパウ病院の魅力
サンパウ病院の美しさは目を見張るものがあり、現在ではバルセロナの観光名所の一つとしても注目を集めています。
具体的に、サンパウ病院にはどのような魅力があるのか、深堀していきます。
モデルニスモ建築家が手掛けたデザイン
サンパウ病院は、モデルニスモ建築の建築家として知られる「リュイス・ドメネク・イ・モンタネール」が設計を行いました。モンタネールは、これまでにカタルーニャ音楽堂やロエベの入る邸宅などを手掛けてきた建築家でもあり、実力もセンスも認められていました。彫刻家や工芸家たちとのコラボも積極的に行い、とくに装飾にこだわった設計を行うのが、モンタネールの特徴です。
有名建築家が手掛けたサンパウ病院は、内装・外装ともに華やかでありながら、歴史を感じる温かみある雰囲気を醸し出しています。
歴史を感じる佇まいがポイント
サンパウ病院が誕生したのは、1401年の頃。当時は、現在ほど広い病院ではなかったものの、19世紀の終わりに差し掛かった頃、バルセロナの街が発展したこともあり、病院の拡大も求められた時代でした。
銀行家であったパウ・ジル氏からの寄付を受けて、サンパウ病院は初めての増築工事を行ったのです。モンタネールが設計に加わったのが、この増築工事のタイミングであり、現代に至るまで多くの人々の心に残るバルセロナの象徴として佇んでいます。
ちなみに、増築工事が完了したのは、1930年のこと。2009年には別の建物へと移転しますが、それまでは街の人々の健康を守る病院としての地位を築いていました。
6つの建築物からなる建物
サンパウ病院は、6つの建築物からなる建物です。外観や内装を見て分かる通り、いたるところに、カラフルなタイルが敷き詰められ、美しいステンドガラスやモザイク画などが見られます。
院内の細部に目を向けてみると、天井にはアラブ風デザインが用いられ、入口にはアーチやタイルが施されているなど、見どころは満載です。
見学者がやすらげるくつろぎスペースもあり
サンパウ病院の各棟の中心には、広場が設けられています。広場には自由にくつろげるスペースが完備されているので、見学に来た人たちが心置きなくゆったりと過ごしている様子が見られます。
良い天気の日に開放的な広場でくつろげたら、気持ちよく過ごせること間違いなし。日本の病院でも、のんびりと過ごせる広場は人気であることから、これから開業を検討している方も可能な範囲で広場を設けてみてはいかがでしょうか。
サンパウ病院の現在
もともとは病院として建築されたサンパウ病院ですが、現在は医療機関として機能している部分はごくわずか。今では、観光名所や公共施設として活用されています。
また、2000年には、ユネスコの世界遺産にも登録された実績があり、建築の価値と歴史的な希少性が認められました。
クリニックの開業を検討している方はもちろんのこと、すでにクリニックの開業を経て活躍している方も、建物の参考としてサンパウ病院に足を運んでみるのも良いかもしれません。
おわりに
本ページでは、世界でも珍しい「美しい病院」である、サンパウ病院についてご紹介しました。まるで美術館を思わせるその佇まいは、見る人を圧倒します。美しいだけではなく、歴史も感じる建物であることから、毎年多くの観光客が訪れるほどで、日本からの観光客も少なくありません。
クリニックの建築デザインに興味がある方は、ぜひサンパウ病院の事例をヒントにしながら、納得できるデザインを検討してみてはいかがでしょうか。