
最終更新日:2023年08月31日
「継承開業」という言葉を聞いて、疑問に感じている方は多いのではないでしょうか。医療業界に従事する方や、その関係者の間で話題に上がることが多く、近年注目されているテーマでもあります。
とくに、医師の高齢化が進んでいる現場や、なかなか医師の世代交代に至っていない病院であれば、「継承開業」はきちんと把握しておくことが大切です。
そこで、今回は継承開業の概要や、メリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。
継承開業とは
継承開業とは、病院の院長の高齢化などを理由に他の医師が病院を引き継いだうえで、新たに開業することを指します。病院を継承する医師の多くが、院長の子どもであることが多いものの、近年は親子関係にない第三者の継承者も増えている状況です。
しかし、一方で病院の継承開業がまだまだ進んでいないといった課題もあります。医師には会社員のような定年といった概念がないため、比較的長く現役医師として活躍し続けることができます。そもそも継承を臨んでおらず、自分の代での閉院を検討していることも少なくありません。
また、医師に子どもや親族がいなかったり、子どもや親族がいてもそれぞれが継承を希望していなかったりするなど、継承開業をしようにも事情によって選択できないといったケースもあります。
とはいえ、継承開業をしないまま閉院してしまうと、長年通っていた患者様が他の病院へ移る必要が生じてしまい負担をかけることにつながります。
また、働く従業員たちが転職を余儀なくされる事態でもあるので、「継承開業しない」を安易に選択することは好ましいことであるとは言えないのが現状です。
継承開業のメリット
仮に、継承開業を選択した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは、継承開業をするメリットについて解説していきます。
一般的な「開業準備」を最小限にできる
継承開業のメリットとして、まず挙げられるのが開業準備を最小限に抑えられる点です。すでに、開業場所が決まっていて、内装や設備もそのまま活用できるので、それぞれを新調する必要がありません。
また、すでに一定の患者様を確保できているのであれば、集客面での手間も軽減できます。すでに軌道に乗っている状況で開業できる点は、継承開業の大きなメリットでしょう。
コストを抑えた開業が可能
継承開業は、コストを抑えた開業ができるのがメリットです。新たに従業員を確保する必要がないので、求人募集にお金をかけることはありませんし、設備もそのまま使えるため新調する費用を抑えることができます。
また、極端に古い建物でなければ、内装工事・外装工事も必要ないので、新規開業と比べるとかかるコストは非常に安価です。
継承開業のデメリット
継承開業にはさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。継承開業をする際には、以下のデメリットもふまえたうえで検討してください。
情報収集や手続きの負担がある
継承開業のデメリットとして、まず挙げられるのが情報収集や手続きの負担があることです。継承開業ではある程度の知識が求められるうえ、クリニックM&Aは、手続きが複雑なことが多く、結局「何から調べたらいいのか分からない」「何から手を付けたらいいのか悩む」といった事態に陥ってしまいます。
不安な方は、医療機関の継承開業に精通した専門家に相談したうえで、進めていくことが大切です。
古い設備は買い替える必要がある
継承開業は、設備はそのまま開業後も活用できるのがメリットですが、設備が古すぎる場合には買い替える必要があるでしょう。設備だけではなく、内装や外装など、お客様や働く従業員の満足度につながる部分も、必要に応じて回収していくことが求められます。
仮に、買い替えや回収が必要であると判断される場合には、当然開業にあたってコストが重なってしまうため、きちんと費用面も視野に入れて検討することが重要です。
従来のスタイルからの大幅変更が難しい
継承開業前の病院の理念や診療方針などが患者様及び従業員に浸透している場合、新たなスタイルに変更することは難しいことがあります。時間をかけて患者様や従業員から理解を得ながら、新しい理念・経営方針を共有していく必要があるでしょう。
また、前院長から医院を継承して開業するのであれば、これまでの場所を活用することとなります。つまり、開業場所を自分で選択できないといったデメリットもあるのです。
「これまでの病院とは違う場所で、違う方向性で開業したい」と考えている方にとっては、継承開業の制限の多さに困惑する場合があります。
おわりに
今回は、継承開業の概要や、継承開業を進めるメリット・デメリットについて解説しました。継承開業をすることは、働く従業員にこれまで通り働ける環境を提供できるとともに、患者様が通い慣れた病院に通院し続けられることでもあります。
継承開業は新規開業とは異なるメリットも多いので、院長の高齢化が課題となっている現場では、ぜひ検討してほしいところです。
とはいえ、継承開業にはデメリットもあるのも事実。メリット・デメリットそれぞれきちんと把握したうえで、継承開業を検討してみてはいかがでしょうか。