
最終更新日:2023年03月20日
これから開業したいと考えているドクターから近年注目を集めているのが「在宅医療の提供」です。現代の需要にマッチしている医療の在り方であり、すでに現時点で在宅医療に特化した開業事例は数多く存在します。
しかし、在宅医療の提供を目的として開業するにあたり、気になるのが施設基準の「24時間対応」ではないでしょうか。
そこで、今回は24時間対応における対策や、在宅療養支援診療所として申請しない選択肢を選ぶことなどについて詳しく解説します。
24時間対応について
そもそも、在宅医療の現場における24時間対応とはどういうことなのでしょうか。
まずは24時間対応の概要や、診療などのポイントを見ていきましょう。
指示書料
指示書料は、特別訪問看護指示の場合で100点です。さいかし、原則1回の発行であり、難病や重症褥瘡などのケースであっても、最大で1か月に2回までとなります。訪問看護ステーションへの訪問看護指示料に関しては300点ですが、1か月に1回が上限です。
また、仮に訪問看護で週に3回以上の点滴を施すのであれば、「在宅感謝訪問点滴注射管理指導料」で60点を算定できます。
往診料
往診や訪問診療などでの往診料は、往診で足を運ぶのが不定期であることが前提で720点算定できます。再診であれば、時間外の加算及び休日加算もできるのが特徴です。
ちなみに、往診・訪問の診療時間が1時間を超えるような場合には、以降30分ごとに100点が加算できます。
在宅時医学総合管理料・各種指導管理料
一定の条件を満たした診療を実施した場合には、「在宅時医学総合管理料1」として、処方の交付がある場合に4,200点、処方の交付がない場合に4,500点を算定できます。在宅時医学総合管理料1が算定されるのは、届出保険医療機関で通院が難しい受診者のもとへ1か月に2回以上の訪問診療を行う場合です。ただし、24時間365日実施していることが条件であるため注意してください。
また、訪問診療や往診が1か月に4回以上となる場合には、重傷者加算として患者1人あたり1,000点の加算が可能です。(1か月に1回まで)ほかにも、退院後1年以内の患者が在宅医療となった場合には、在宅移行早期加算が加算できます。点数は、月に1回の3か月に限り100点です。
各処置料
在宅医療では、検査や注射、投薬、処置などを行います。在宅時医学総合管理料や特定施設入居者等医学総合管理料においては、投薬料も含まれています。これは、外来診療した場合も同様です。投薬料のほか、処置料や皮膚科特定疾患管理料、在宅寝たきり患者処置指導管理料などもまとめられていることから、別途算定することはできません。支給した薬剤料及び特定保健医療材料のみの算定が可能です。
とはいえ、併算が可能なケースも存在します。たとえば、床ずれに関する処置や、胃ろう交換です。床ずれが「重度褥瘡」と判断される処置であれば併算ができます。胃ろう交換においては、訪問診療の際に画像診断もしくは内視鏡で確認・実施した場合に限り200点が「胃ろうカテーテル交換料」として算定できます。
「在宅療養支援診療所」の申請は必要?
在宅療養支援診療所としての申請有無に関しては、実は必須ではありません。申請するか否かの判断は施設側に委ねられているため、申請しないまま在宅医療を提供すること自体は問題ありません。
実際、開業まもない時点で在宅患者を擁していなかったり、常時対応が必要な患者が少ない施設では、申請していないケースが多い傾向にあります。
「在宅療養支援診療所」として申請しないことについて
前項でも触れた通り、在宅療養支援診療所として申請しないという選択肢は全く問題がありません。しかし、申請しない場合には、病床を持たない診療所向けの点数である「在宅時医学総合管理料」が算定されます。
在宅時医学総合管理料は、厚生労働大臣が定めた状態の患者に対して、1か月に既定の回数の訪問診療を行っている場合に算定します。
具体的な点数は以下の通りです。
■別に厚生労働大臣が定める状態の患者に対して、月2回以上訪問診療を行っている場合
・単一建物診療患者が2人以上9人以下の場合:4,140点
・単一建物診療患者が1人の場合:5,000点
・上記のいずれにも該当しない場合:2,640点
■月2回以上訪問診療を行っている場合
・単一建物診療患者が2人以上9人以下の場合:2,200点
・単一建物診療患者が1人の場合:4,100点
・上記のいずれにも該当しない場合:1,100点
■月1回訪問診療を行っている場合
・単一建物診療患者が2人以上9人以下の場合:1,380点
・単一建物診療患者が1人の場合:2,520点
・上記のいずれにも該当しない場合:720点
おわりに
今回は、在宅医療を提供する現場が、在宅療養支援診療所として申請しないことについて解説します。申請せずに在宅医療を提供すること自体は全く問題なく、現に未申請で在宅医療を提供しているドクターは少なくありません。
しかし、点数の観点から見ると、未申請での在宅医療は負担が大きくなってしまうこともあるので注意が必要です。
提供する医療サービスと点数それぞれをよく確認したうえで、申請するか否かを検討してみてはいかがでしょうか。